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技術研究レポート

樋門操作の最適化を目指したソリューションサービス

1.目的

中小河川では、樋門位置での水位データが観測されていないことが多く、樋門操作を行う際の出動水位は、樋門近傍の水位観測所の水位データを用いて運用しているのが実態である。

島根県江津市桜江町を流れる八戸川は、江の川の左支川であり、「本川(江の川)のバックウォーター」と「支川(八戸川)の自己流」の影響を受け、2つの洪水パターンでの樋門操作が必要となる。(下図に位置関係を示す)

位置関係

 

これらの状況を踏まえた樋門操作を行うため、2つの洪水パターンに対する樋門操作基準を策定するとともに、警戒体制の判断を容易にするためのアラームメールを送出するシステムを開発した。

このシステムは、本川合流点付近のバックウォーター区間の樋門であれば他河川でも適用でき、確実・最適な水防活動の支援を可能とするものである。

 

2.洪水パターンを考慮した出動判断図

2つの洪水パターンがある場合の警戒体制水位は、水位と流量の大小でさまざまなケースが考えられるため、本川合流点水位と流量をそれぞれ変化させて水理検討を行い、対象樋門地点で警戒体制水位に達する組み合わせを求め、警戒体制に入る指標となる出動判断図を作成した。

この検討の手順を以下に示す。

  1. 本川水位観測所の水位(下流水位)と支川水位観測所の流量(上流から流下する自己流)をそれぞれ変化させ不等流計算を行う。
  2. 対象樋門地点で警戒体制水位に達する本川水位観測所の水位と支川水位観測所の流量及び水位(H-Q式換算)の関係を整理する。
  3. 対象樋門地点で警戒体制水位に達する条件について、横軸に本川水位観測所水位、縦軸に支川水位観測所水位をプロットし、警戒体制に入る指標となる出動判断図を作成する。また、同様に待避の判断図も作成し、「出動待避判断図」として整理した。この図では水位が上昇し、水防団待機水位に達すると水防班が出動し、青色の範囲に入ると管理者にメールが送信される。これをうけて、管理者が操作員に出動要請を行う。待避の判断も同様である。
出動・退避判断図

【出動・退避判断図】

3.連絡体制

樋門操作の連絡は出動・避難・解除の3パターンがあるが、操作を確実・迅速に行うためには、各々の水位を正確に把握することが重要である。

このため、パソコンのプログラムを利用して無人で河川の水位を常時監視し、出動水位待避水位になったら自動で連絡するメール送信のシステムを構築した。

メール送信システムの概念図

【メール送信システムの概念図】

この流れを図示すると下図のようになり、出動、避難、解除の3段階でメールを送信することになる。

連絡体制の概要図

【連絡体制の概要図】

このシステムは約3年間運用しているが、その間で8回の出動メールが送信された。

多くの樋門では、水位観測所の水防団待機水位を樋門操作の待機水位としている事例が多く、特に本川からのバックウォーター区間では長期間の待機を余儀なくされてきた。このシステムを活用することにより適切なタイミングでの出動・退避が可能となるため、操作員の負担軽減が期待される。

R2.6洪水では、水防団待機水位を樋門操作の待機水位として運用したが、待機時間が1日と長期間にわたることとなった。しかし、このシステムを活用して適切に運用した場合を検証すると、待機時間は4時間程度と大幅な負担軽減に繋がることがわかった。

今後は、操作実績を重ねて水位データの蓄積を行い、より実態にあった「出動・退避判断図」となるよう改善していく所存である。

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